設計上の基本ルール
(Basic design rules)

[English version]

パネルを構築するには、目的とする細胞集団を同定するために必要な情報をできるだけ限り明確にしておくことが非常に重要です。 例えば、特定の細胞型を対象とするのか、あるいはサブセットであるのか、また、活性化マーカーや細胞存在比率の変化を見るのか、複数のマーカーが共発現しているのか、あるいは発現パターンがわかっているのかなどです。

蛍光色素分離(Fluorophore Separation)

マルチカラーパネルを構築する場合、理想的には複数のレーザーによって励起される蛍光色素がないよう、また可能であれば、複数の検出器にまたがって検出される蛍光を発するような色素がないように分離することが最善です。 そうすることにより、漏れ込みやそれに伴い必要となるコンペンセーションが最小限に抑えられます。 また、蛍光の広がりがデータにおよぼす影響を減らします。 しかし、パネルの蛍光色素の数を増やしてゆくと、こうしたことは必ずしも可能ではありません。 したがって、パネルのデザインにおいては、他にも考慮する必要があります。

抗原密度(Antigen Density)

相対的な抗原密度は、蛍光色素を選ぶ際に非常に重要です。 一般的なガイドラインとして、明るい蛍光色素(例えばPE)を低発現マーカーに割当て、暗い蛍光色素(例えばパシフィックブルー:PB)を高発現マーカーに割り当てるのが最良です。 明るい色素からの蛍光の広がりは、近くのチャネルの低発現の蛍光シグナルを隠してしまいます。 蛍光色素を適切に選択することは、見たい細胞集団を分離することに役立ちます。

蛍光特性(Fluorophore Properties)

色素の蛍光特性も考慮が必要です。特に、複数レーザーによる励起に注意する必要があります。例えば、APCは405 nmレーザーと640 nmレーザーの両方で励起されます。蛍光色素の相対的な明るさに加えて、それらの蛍光スペクトルが重要です。一般に、明るい蛍光色素はより大きな広がりを持ち、より長い波長でより顕著です。またタンデム蛍光色素は複数のレーザーに対して柔軟なマルチプレックス(多色)化を可能にしますが、特別な注意を払う必要があります。ドナー色素からの発光の可能性も考慮する必要があります。 例えば、PEを用いたタンデム蛍光色素の場合、578nmにPEからのある程度の発光があるかもしれません。アクセプターの励起と発光も考慮する必要があります。またタンデム色素は、光と固定処理に敏感なため、注意深く分解を避けるように取り扱うことが推奨されます。さらに、ドナー分子に対するアクセプター色素の割合の違いに起因するロット間のバラツキがあり得ます。タンデム色素は細胞内染色には適していない可能性があります。そのため、マルチプレックスパネルに細胞内分子が含まれている場合は、可能であれば他の蛍光色素を使用することをお勧めします。

マーカー発現パターン(Marker Expression Patterns)

蛍光の漏れ込み(Spillover)や広がりの効果を減らす一般的な方法の1つは、抗原の発現パターンに基づいて蛍光色素を慎重に選択することです。これは、相互に排他的なマーカー(例えば、CD3およびCD19)上に漏れ込みを有する蛍光色素を割り当てることで行うことができます。 この場合、漏れ込みの影響は簡単に補正(コンペンセーション)することができます。反対に、同時発現するマーカーについては、漏れ込みが最小となるような蛍光色素の組み合わせを選択すべきです。これは、活性化マーカーに見られるような発現パターンが連続している抗原の場合にも当てはまるはずです。漏れ込みの影響を最小限に抑える別の方法は、親子孫ルール(parent descendant rule)を使用することです。これは、マーカーが発現したとしても、相対的な量が重要ではない場合や、漏れ込みがあったとしても重要ではない場合です。例えば、T細胞のCD3チャネルへのCD4蛍光の漏れ込みがあります。すべてのT細胞はCD3を発現しているので、CD4(ヘルパーT細胞マーカー)の蛍光が漏れ込むことは重要ではありません。

ダンプチャンネル(Dump Channels)

特定の細胞集団に特に関心がない場合は、ダンプチャネルを作成することができます。ダンプチャネルは、その名前が示唆するように、不要なサンプルを無視されるチャネルに配置することによって除去します。これは、必要でない細胞がすべての細胞を1つの蛍光色素で標識することによって除外することができるので、造血幹細胞のような存在比率の少ない細胞を見る場合に特に有用です。これを行う最も簡単な方法は、ビオチン化された一次抗体と、ダンプチャネルに使用されている色素が結合したストレプトアビジンを使用することです。生存率染色も、ネガティブが生存細胞となるため、このチャンネルに含めることもできます。不要な細胞集団を除去するもう一つの方法は、捕捉後のゲーティングを注意深く行うことです。前方散乱または側方散乱、またはマーカーの発現に基づいて、細胞が出現すべき場所がわかっている場合、細胞を除外することができます。不要な細胞を取り除くことで、それらの細胞に起因する望ましくない結合や蛍光の漏れ込みや広がりも除去されます。これは、骨髄細胞を見るときに特に有用です。しかし、目的とする細胞が除去されないように注意して実行する必要があります。