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 抗体精製の一般的な方法は、初めにプロテインAまたはGによりアフィニティ精製を行います。さらに純度を上げる場合は、イオン交換やCHT(セラミックハイドロキシアパタイト)などを組み合わせて2-3ステップかけることもあります。プロテインA/Gでの精製は酸性条件下での溶出を行うため、溶出中に抗体の凝集や変性など、抗体の活性に悪い影響を及ぼしてしまう恐れがあります。

今回、陽イオン交換担体のNuvia Sを用いることで、pHが4.5-5のマイルドな条件下でのモノクローナル抗体の精製を可能にすることを示しました。
下図のAは、CHO細胞培養からのモノクローナル抗体をNuvia Sで精製したときのクロマトグラムです。2段階のステップワイズ溶出で、2ステップ目で抗体を溶出しています。
図Aのフラクションのうち、バッファーBで洗浄したフラクション番号2-9をSDS-PAGEとMALDI-TOF MSで確認の結果、脱落した抗体のL鎖の分解物が回収されていることが分かり、バッファーCで溶出して回収したフラクション番号11-15には分解していない抗体が回収されていることがわかりました(図B)。
また、SEC-HPLCでの分析の結果でもフラクション番号11-15には分解または凝集した抗体が含まれていないことが確認されました(図C)。

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A: CHO細胞培養からのモノクローナル抗体をNuvia Sで精製したときのクロマトグラム
B: フラクション2-9(左図)および11-15(右図)の電気泳動像 (フラクション4(赤丸)はMALDI-TOF Massで確認)
C: SEC-HPLCでの確認(Red: フラクション2-9、Green: フラクション11-15)

一般的にプロテインA担体の抗体吸着量は20-40mg/mlですが、Nuvia Sの抗体吸着量は100mg/ml以上です。プロテインA担体に比べてコスト削減が期待できますので、プロセスレベルへの展開にも期待できます。

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