このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。

プロテアーゼ処理したサンプルを LC-MSで網羅的に解析するショットガンアプローチは、プロテオミクスの重要な技術として広く利用されています。この方法は一度の分析で数千ものペプチドを同定できますが、より多くのペプチドを網羅的に決定するには、強陽イオン交換クロマト(SCX)、親水性相互作用クロマト(HILIC)や等電点電気泳動(IEF) などによるペプチドの前分画が有効といわれています。

今回ご紹介する技術資料(Bulletin 6140)では、プロテアーゼ処理した細胞抽出液をまずプロティアン i12 IEF セルで分離し、泳動後のストリップを端から等間隔にカットして(図1)、それぞれペプチドを抽出することで、等電点に応じた11個のペプチドサンプルに分画しています。これらをLC-MS/MS システムで解析したところ、未分画のペプチドサンプルでは972個のタンパク質(ペプチドとしては2,932個)を同定したのに対して、プロティアン i12 IEF セルで分画した方法だと3,692個ものタンパク質(ペプチドとしては15,483個)を同定することができました。また、同様に等電点電気泳動で液層分画として回収するOff-Gel法と比較しても、13.7%も多くのタンパク質を同定したことが示されています(図2)。

等電点電気泳動というとタンパク質を分離するための装置であるように思われますが、このようにペプチドの分画にも威力を発揮することができます。

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図1.等間隔にカットしたIPG ストリップの例

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図2.LC-MS/MS で同定したペプチド数の比較
未分画のペプチドサンプル、IEFで分画したペプチドサンプルについて、それぞれLC-MS/MSで同定されたペプチド数を比較しました。In-gel ではプロティアン i12 IEFセルを、Off-gelではAgilent 3100 OFFGEL Fractionator(アジレントテクノロジー社)を使用しました。重なっている部分は共通して検出されたペプチド数を示します。