このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。

セルソーターで分取した細胞(幹細胞や分化・誘導した細胞)やLCM(Laser capture microdissection)サンプル、FFPE(Formatin-fixed, Paraffin-embedded)サンプル、バイオプシーサンプルは、サンプル量が限られているため、多数の遺伝子発現解析やSNPs解析を行うには、cDNA量やgDNA (genomic DNA)量が少ないという問題があります。このようなサンプルの遺伝子解析においてはPre Amplification(前増幅)を行うことで対処しますが、その際、ターゲットとなるテンプレートの長さや配列により増幅効率が異なり、遺伝子間でバイアスが生じてしまうことがしばしば問題となっていました。

SsoAdvanced PreAmp Supermixは、100pg-250ngのcDNAやgDNAから、最大100ターゲットの、バイアスの少ないPre Amplification反応を行う試薬です。Pre Amplification後のサンプルは-20℃で1年間保存しておくことが可能で、プローブ法によるリアルタイムPCRだけでなく、SYBR Green法によるリアルタイムPCR、エンドポイントPCR(SNPジェノタイピング)にも対応しています。

今回ご紹介する技術資料では、各社のPreAmp用試薬を用いた場合の遺伝子間でのバイアスの比較結果を示しています。
下図では、各メーカーのPreAmp試薬と発現量解析試薬を用いて同じターゲット遺伝子について実験した結果を左右で比較しています。
一段目の図(A,D)では24種類の遺伝子のプローブ法によるリアルタイムPCRの結果をターゲット順に並べたものです。
二段目(B,E)では88種類の遺伝子を、三段目(C,F)では90種類の遺伝子についてをSYBR Green法で実験を行ったものですが、横軸にはCq値(サイクル数)を示しています。

各グラフの縦軸はPreAmpを行った場合と行っていない場合の差(Bias quantification (BQ) score)を表しており、つまり、PreAmpを行わない場合と比較して、行なった場合で変化が生じてしまった場合には、BQ Scoreが0から乖離してしまいます。これによればサイクル数が大きくなるほど、つまり存在量が少ないほど、PreAmpによる影響を受けやすくなる傾向にありますが、SsoAdvanced PreAmp Supermixを用いた場合では、BQ Scoreは概ね小さく(0.75以下)抑えられていることがわかります。

PreAmp試薬による遺伝子増幅によるバイアスを示した実験
図左(A, B, C) SsoAdvanced PreAmp SupermixによるPre Amplificationの有無
図右(D, E, F) 他社Pre Amp試薬によるPre Amplificationの有無