トランスブロットSDセルに関する質問集

質問 ID: 689

[トランスブロットSDセル] 高分子タンパク質の転写効率を上げることはできますか?

回答

基本的にトランスブロットSDセルは120kDaを超えるタンパク質の転写効率が極端に低下します。
それを踏まえた上で、次の点を考慮されることをお勧め致します。
1)ゲル濃度を下げる。
ゲル濃度を下げることで、ゲルのポアサイズが大きくなり、ゲルからのタンパク質の溶出効率が増加します。目的分子量の分離能に影響を与えない程度に、ゲル濃度を下げることを推奨します。

2)転写時間を長くする。
転写時間を長くすることで、転写効率を上げることができますが、トランスブロットSDセルの場合には使用できるバッファー量が限られ、クーリング機能がありません。そのためあまり長時間の転写を行わないようにしてください。

3)電圧を上げる。
電圧は最大25Vまで上げることができます。それを超える電圧は機械的なダメージが大きくなり、ゲルやメンブレンへ悪影響を及ぼす恐れがありますのでお控えください。

4)メタノールの量を減らす。
一般的な転写バッファーに添加されているメタノールの役割は、タンパク質とゲルとの親和性を高める役割があります。しかし、メタノールはゲルを収縮させる効果があり、ゲルからのタンパク質の溶出効率を低下させる恐れがあります。
メタノールは最大で20%加えられていますが、0%、10%に減らして検討してください。

5)SDSを加える。
SDSはタンパク質のマイナスチャージを強くし、ゲルからの溶出効率を高める役割を果たします。しかし、添加しすぎると発熱を促進し、機械的ダメージを大きくし、タンパク質が拡散しやすくなります。
転写バッファーに 0.025-0.1% のSDSを添加することができますが、必要なバンドがメンブレンを抜けることなく、目的バンドの転写が改善されるか、いくつかの条件で検討する必要があります。

6)非連続バッファー系を使用する。
非連続系はTris/CAPSバッファー系を用います。非連続系をする場合、ゲルはSDSが入ったバッファーで平衡化し、メンブレンはメタノールの入ったバッファー系で平衡化したものをブロッティングします。
詳細についてはBulletin2134で紹介されています。

7)タンク式ブロッティング装置に変更する。
タンク式ブロッティング装置はトランスブロットSDでは行えない長時間のブロッティングや、冷却機能を備えることができます。サンプルに合わせたよりフレキシブルな転写が可能です。