フローサイトメーターの構造による分類
(Classification by structure of flow cytometer)

[日本語版のみ]

フローサイトメーター(セルアナライザーとセルソーター)には、レーザー(光学系)に関する違いによって分類されることがあります。一つはレーザー照射点の位置の違いによる分類、もう一つは励起光源であるレーザー軸による分類です。

1.レーザー照射点の位置による分類

フローサイトメーターはサンプル(細胞)にレーザーを照射する位置の違いにより2つに分けられます。一つはレーザーをキュベット内で照射するキュベット方式(Sense-in-Cuvette)。もう一つはサンプル(細胞)がノズルから出て空気中で流束(ストリーム)になっている位置で照射するJet-in-Air方式(Sense-in-Air)方式です。

キュベット方式では透明なキュベット内で、サンプル(細胞)にレーザー照射するため、散乱による減衰が少なく、高感度な検出が可能です。このため、ほとんどのセルアナライザーと一部のセルソーターはキュベット方式を採用しています。しかし、サンプルの流束断面の形状が一定ではなく、キュベット内では四角形で、ノズルを通過する際には液滴形成のため、円形に変化します。この変化によって乱流が生じるため、細胞によっては生存率や機能が低下し、セルソーティング(細胞分取)の際には問題になる場合があります。

一方でJet-in-Air方式では、円筒形の流束(ストリーム)に対して空気中でレーザーを照射するため、流束の表面で散乱が起こり、検出感度は低下する傾向にあります。しかし、流束の断面形状は円形のまま変化しないため乱流の発生が少なく、細胞の生存率や機能が低下しにくいという特徴があります。これはセルソーティングの際に利点となるため、一部のセルソーターではJet-in-Air方式を積極的に採用しています。

2.レーザー軸の方式による分類

レーザー照射点の位置とは別にレーザー軸によってフローサイトメーターが分類されることがあります。一つは複数のレーザーが同じレーザー軸となってサンプル(細胞)に照射される同軸方式(Co-Linear Excitation)。もう一つは複数のレーザーが別々のレーザー軸でサンプルに照射される異軸方式(Spatially-Separated Excitation)です。

同軸方式(Co-Linear Excitation)では、複数のレーザーを単一の光軸に統合してサンプル(細胞)に照射します。蛍光を検出する光学系(検出系)も複数のレーザーで共有するため、異軸方式で問題になるレーザーディレイは生じません。しかし、サンプル(細胞)を複数のレーザーで同時に励起し、その蛍光を単一の検出系で検出するため、検出チャンネル間での蛍光の漏れ込みが大きくなりやすく、検出チャンネル数はあまり多くできません。

一方、異軸方式(Spatially-Separated Excitation)では、レーザー毎に照射点の位置が異なるため、ひとつの細胞に各レーザーが照射される時刻が異なります(レーザーディレイ)。しかし、レーザー毎に独立した検出系を持つため、蛍光の漏れ込みが低減され、検出チャンネル数を多くすることが容易になります。このため、多くのセルアナライザーでは異軸方式を採用しています。

バイオ・ラッド社のS3e™セルソーターはJet-in-Air方式で同軸システム(Collinear System)のセルソーターです。またZE5™ Cell Analyzerはキュベット方式で異軸システ(Spatially-Separated System)のセルアナライザーです。