このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。
腎障害は、医療や薬剤開発の様々な場面で問題となります。 例えば急性腎障害は、薬剤暴露、事故、医療処置の際の血液損失などによって引き起こされます。また慢性腎障害は、糖尿病や高血圧などの長期疾患や、様々な遺伝性の疾患などに伴って発症します。このような腎障害の早期検出は、適切な治療を行い、腎機能がさらに失われることを防ぐために極めて重要です。
一方、薬剤開発においては、前臨床開発段階にある治療法の約30%が、腎毒性を示したことが理由で開発中止となっています。そして急性腎毒性の約20%が、薬剤暴露によるものです。こうした現状に対し、従来の腎障害マーカーである血中クレアチニン (SCr) や血中尿素窒素 (BUN) は、腎障害が起こってから数日から数週間後に検出可能となるため、腎障害の早期診断が可能な新規バイオマーカーが求められていました。 また腎障害は、糸球体、近位尿細管、遠位尿細管など、様々な部位で起こるため、マーカーの部位特異性も重要です。
このような課題に対してMyriad RBM社は、Predictive Safety Testing Consortium (PSTC)、FDA、およびEMEA と緊密に連携し、感度と特異性がより高い腎障害マーカーの選定を進め、KIM-1、Albumin など7つのマーカーを選択しました。この成果を踏まえ、バイオ・ラッドはMyriad RBM社とパートナー契約を締結し、Bio-Plex Pro RBM腎毒性アッセイを製品化しました。このアッセイには上記のバイオマーカーを含む合計12の測定項目があり、腎毒性関連マーカーのマルチプレックス測定を実現し、ヒト、イヌ、およびラット用のキットがラインナップされています。
これらのキットを用いた測定により、腎障害を伴う疾患の進展や、開発中の薬剤の毒性などを、より早期に検出できると期待されます。複数のマーカーをマルチプレックスで測定することにより、腎障害の発生部位特定にも貢献します。