このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。

免疫沈降実験(IP, Immunoprecipitation)や免疫共沈降実験(Co-IP, Co-immunoprecipitaion)では、沈降物をSDS-PAGEで分離した後、メンブレンに転写しますが、ターゲットのタンパク質の他にも、沈降する際に使用した抗体(イムノグロブリン)が変性した状態でメンブレン上に存在する場合があります。 こうしたイムノグロブリンのH鎖とL鎖は、それぞれおよそ50kDaと25kDaの位置にあり、ターゲット分子のサイズによっては検出をマスクしてしまったり、バックグラウンドを高めてしまう原因となりえます。

こうしたことを防ぐためには、以下のような工夫がされてきました。

  • 沈降する際に使用した抗体がビーズから溶出しないように、マイルドな条件でターゲット分子を溶出する
    (SDS-PAGEサンプルバッファーではなく、酸性溶液で溶出)
  • 沈降する際に使用した抗体がビーズから溶出しないように、ビーズ上のプロテインA/Gと抗体を架橋しておく
  • 沈降する際に使用した抗体の生物種とは別の生物種由来の一次抗体を使用してウェスタンブロッティング検出を行う

また、血液サンプルや、脾臓・肝臓などといった組織の抽出液にも内在性の抗体が含まれることがあり、イムノブロッティングにおいては、内在性抗体のH鎖やL鎖がターゲットの検出を妨げることがあります。

今回紹介するTidyBlot™ Western Blot Detection Reagent:HRP(STAR209P) は、抗体の高次構造を認識するため、このような変性状態のH鎖やL鎖にはほとんど結合せず、ウェスタンブロッティング検出での一次抗体を特異的に認識します。 そのため、ウエスタンブロッティングにおいて二次抗体として使用することにより、ターゲットタンパク質をクリアーに検出することに役立ちます(図 1)。

しかも、様々な動物由来の一次抗体に結合するため、動物種ごとに複数の二次抗体を用意する必要がなく、汎用性の高い検出を行うことができます(図 2, 下表)。 免疫沈降実験でなくとも、いまお使いのHRP標識二次抗体をTidyBlot™ Western Blot Detection Reagent:HRPに替えて実験するだけです。

TidyBlot™と標準的な二次抗体の比較
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図 1. TidyBlot™ (lane 2,3)と標準的な抗マウスIgG二次抗体(HRP標識)(lane 5,6)の比較

転写後のPVDFメンブレンをレーン毎に切断して比較実験を行った。TidyBlot™ (Lane 2)および標準的な二次抗体(Lane 5)ともターゲットタンパク(46kDa)を検出しているが(Lane 3,6は一次抗体なしのコントロール) 、Lane 5,6では、サンプルに含まれる変性した抗体のH鎖(50kDa)とL鎖(25kDa)も検出されてしまっている。

様々な動物由来の一次抗体に対応
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図 2. ヤギ抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体(ポリクローナル)に対するTidyBlot™ の交差性

TidyBlot™ のIgGに対する交差性
動物種 モノクローナル抗体 ポリクローナル抗体
Bovine IgG2 使用可能
Goat IgG2 使用可能
Human IgG1, IgG2, IgG4 使用可能
Mouse IgG2a, IgG2b, IgG3, IgG1* 使用可能
Rabbit Total IgG 使用可能
Rat IgG2c 使用可能
Sheep IgG2 使用可能

*: マウスIgG1への親和性は低いため、ご検討の際は確認試験を行って下さい。
抗マウスκ鎖抗体(クローンOX-20)(型番MCA152P)もご検討下さい。このHRP標識抗体は、H鎖には結合しないため、50kDa付近のバンドの検出にはお使いいただけます。

Rabbit抗体に対しては、HRP標識抗ウサギ軽鎖マウス抗体(クローンSB62a)(型番MCA6003P)もご用意しています。

バイオ・ラッドの抗体検索サイト

製品の詳細やデータシートは、バイオ・ラッド抗体検索サイトで確認できます。

TidyBlot™ Western Blot Detection Reagent:HRP(STAR209P)
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