このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。
一般的に、組換えタンパク質を発現・精製する場合には、GSTタグやHisタグといったアフィニティタグが利用されますが、そうした場合、アフィニティカラムでの精製後にもタグが付加されたままの配列のタンパク質が得られることになります。そのような融合タンパクは、タグの大きさにかかわらず、本来のタンパク質の配列とは異なるため、構造解析や機能解析、免疫するための抗原として用いる際にも不都合が生じることがあります。タグを除去する場合には、プロテアーゼを添加してタグを切断し、再度精製するステップなどが別途必要でした。
Profinity eXact Fusion-Tagシステムは、アフィニティタグをベースとしたタンパク質精製システムですが、精製と同時にタグの除去が行うことができます。しかも、精製後のタンパク質のN末端にはタグ由来のアミノ酸残基が残りません。(ただし、ターゲットタンパク質のN末端配列や構造的な問題がある場合には、リンカー配列を付加して、それが残ってしまう場合があります。)Profinity eXact Fusion-Tagシステムを始めてみたい方には、スピンカラムスケールから始めることも可能ですが、全自動のアフィニティタンパク質調製システムであるProfinia Systemと組み合わせることにより、タグの切断のためのインキュベーション時間も自動化することができます。
今回紹介します技術資料(Technical Bulletin 5770)は、グラム陰性細菌Shewanella OneidensisのCystatione Beta-Lyase (MetCあるいはCBL)の大量精製を行った報告です。筆者らは、菌体の破砕条件やタグの切断時間、スケールアップの検討を経たのち、Profinity eXact SystemとProfinia Systemの組み合わせで、純度87%でミリグラムオーダーのアフィニティタグのない、また活性のあるMetCタンパク質を2時間以内で精製することができました。下記リンクより、Profinity eXact Fusion-Tagシステムの応用例を合わせてご参照ください。