このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。

乳がんではBRCA1とBRCA2の2つの遺伝子変異が関与しているとされていますが、これらの2つの遺伝子以外でも関与していると考えられる遺伝子変異があります。その一つの候補であるATM遺伝子(毛細血管拡張性運動失調症に関連する遺伝子)について変異を調べるためには、シークエンシングを試みることになります。
その前段階で行われるPCRで多く使用されている Taqポリメラーゼと比較してiProof High-Fidelity DNAポリメラーゼを使用した結果を今回の技術資料では紹介しています。

ATM遺伝子のエクソン部分でTaqポリメラーゼではアニーリング・伸長時間をそれぞれ45秒間としているにも関わらず増幅が困難なケースがありますが、iProofポリメラーゼを使用した場合アニーリング・伸長時間はわずか10秒間と短縮しても増幅が確認できました。下記の図はATM遺伝子のエクソン35について8つのサンプルで増幅を試みた際のTaqポリメラーゼとiProofポリメラーゼでの結果を示しています。

通常フィデリティの高いポリメラーゼは伸長速度が遅く、PCRも長時間かかってしまいますが、iProofポリメラーゼはフィデリティの高いポリメラーゼにSso7dという2本鎖DNA結合タンパク質を融合しており、それにより格段の伸長速度(15-30秒/kb)が得ることができました。ポリメラーゼを変えるだけで、PCRのトータル時間を大幅に短縮する(例えば95分間を28分間に)ことができ、実験時間の効率化を進めることができます。