単一染色とコンペンセーションコントロール
(Single staining and compensation controls)

[English version]

第2章で述べたように、マルチカラーフローサイトメトリーを行う際、補正(コンペンセーション)量を決めるためには、それぞれの色素を単独で染色したサンプルが必要です。 単一色素染色サンプルは、異なる蛍光色素間でのスペクトルのオーバーラップの程度を明らかにし、このオーバーラップの除去あるいは補正(コンペンセーション)を可能にします(第2章、図12)。図12Aでは、 FITCの蛍光がPEチャネルにおいて検出されることが分かります。 図12Dは、適切にコンペンセーションされたときのデータ表示を示しています。 こうしたスペクトルのオーバーラップについて、使用する全ての蛍光色素に対してコンペンセーションをする必要があります。

染色のポイント(Staining Rules)

コンペンセーション用の単一染色サンプルを使用する際の重要なポイントは次のとおりです。

1. コンペンセーションコントロールは、サンプルと同等レベルか、サンプルよりも明るく染まっている必要があります。 コントロールとして測定する蛍光が明るい場合であれば、蛍光標識抗体については、表面抗原を有する細胞の代わりとして、抗体キャプチャービーズで置き換えることもできます。 しかし、タンデム蛍光色素の場合はキャプチャービーズで、置き換えることはできません。

注:同じドナーとアクセプターで作成されたタンデム蛍光色素であれば、同じ蛍光を持つように思うかもしれませんが、そうではありません。 異なるメーカーやロット(Lot)が異なる場合、タンデム蛍光色素は、異なる蛍光色素として扱うべきであり、これらの蛍光色素のそれぞれについて漏れ込みの量が異なる可能性があるため、別々の単一の色素で染色したコントロールを使用する必要があります。

2. コンペンセーションは、陽性集団および陰性集団を用いて実施する必要があります。 個々のコンペンセーションコントロールがビーズであったり、実験で使用された細胞、または異なる細胞であったとしても、コントロール自体には、同等なレベルの自家蛍光を持っている必要があります。 コンペンセーションコントロールのセット全体としては、ビーズまたは細胞の個々のサンプルを含むことができますが、個々のサンプルは、蛍光色素と同じキャリア粒子を有しなければなりません。

3. コンペンセーションコントロールはサンプルと同じ蛍光色素を使用する必要があります。 例えば、GFPおよびFITCの両方は、ほとんど緑色の光を発しますが、発光スペクトルは大きく異なります。 それゆえ、一方をサンプルとして使い、コンペンセーションコントロールに他方を使うということはできません。

4. ソフトウェアが統計的に有意な漏れ込みとして判断するには、十分なイベント数を収集する必要があります。 陽性集団と陰性集団の両方について約5,000イベントが理想的ですが、必要に応じてより少ないイベントが使用できます