このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。

 ProteoMinerは、コンビナトリアルペプチドのリガンドライブラリーが結合したビーズを用いることにより、生体サンプル中のタンパク質含有量の違い(ダイナミックレンジ)を圧縮することができるサンプル処理ツールです。その一方で、タンパク質を網羅的にLC-MSで同定するショットガンアプローチにおいて、等電点電気泳動(IEF)による前分画が有効であることが示されています(Bulletin 6140)。

今回ご紹介します資料では、この両者の技術を組み合わせた以下のようなプロトコールよって、HeLa細胞のライセートから網羅的にタンパク質を同定することを試みています。

まず、ProteoMiner未処理のHeLa可溶性ライセートをトリプシン消化して直接LC-MS/MSで分析したところ、タンパク質同定数は589個だったのに対し、ProteoMiner処理したライセートで固有に同定されたタンパク質を加算すると937個と約1.6倍に増加しました。さらに、ProteoMiner処理ならびに未処理のペプチドをそれぞれIn-Gel IEFで前分画してLC-MS/MSで分析すると、同定タンパク質の総数は3,007個にもなることが示されました。

このように発現量の少ないタンパク質を検出するためのサンプル処理方法として、ProteoMinerによるダイナミックレンジの圧縮と、In-Gel IEFによるペプチド分画を組み合わせることは非常に有効な手段であることが分かりました。さらに、ProteoMiner処理ならびに未処理のサンプルを両方組み合わせて分析することによって、検出ペプチドの網羅性の向上にもつながります。

実験手順
1)HeLa細胞のライセートをProteoMinerで処理(Fig.2参照)
2)ProteoMiner処理、未処理のサンプルをそれぞれトリプシン消化(Fig.4参照)
3)プロティアンi12 IEF による In-Gel IEF
4)IPGストリップを等間隔に11個にカット
5)それぞれの断片からペプチドを抽出
6)LC-MS (LTQ Orbitrap Veros) を用いたタンパク質同定(Fig.6参照)
HeLa細胞の可溶化とProteoMiner処理までに手順 (Fig.2)
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ProteoMiner処理、未処理の各ライセートからのタンパク質同定数 (Fig.4)
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In-Gel IEF 後のサンプルからのタンパク質同定数 (Fig.6)
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