このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。

ZFN、TALEN、CRISPR/Cas9を中心としたゲノム編集と呼ばれる遺伝子改変技術が登場し、遺伝性疾患だけでなく、がんやAIDSなど難治性疾患にも遺伝子治療が注目されています。しかし、遺伝子治療を安全におこなうためには、ウイルスベクターの品質管理・安全性評価が重要になります。従来法では超遠心分離および透析操作をおこなうため、時間と手間がかかりました。この技術資料では、ミックスモードクロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーによる簡便なアデノウイルスの精製法をご紹介します。

ミックスモードクロマトグラフィーのNuvia™cPrime樹脂は負電荷と疎水性の性質をもち、効率よく宿主由来のDNAを除去しながら、アデノウイルス粒子を濃縮することができました。さらに、宿主由来タンパク質を取り除くために、Nuvia™Q陰イオン交換クロマトグラフィーをおこない、高純度のアデノウイルス粒子を調製することができました (下の図および表)。

このようにクロマトグラフィーによるウイルス精製は、効率よく医薬品グレードに匹敵する純度まで調製できるため、製造過程において導入が検討され始めています。

SDS-PAGEによる各精製段階の純度確認
SDS-PAGEによる各精製段階の純度確認

Lane1, 分子量スタンダード
lane 2, ヌクレアーゼ処理済みサンプル
lane 3, Nuvia™cPrime 非吸着画分
lane 4, Nuvia™cPrime 溶出画分/ Nuvia™Q供与サンプル
lane 5, Nuvia™Q非吸着画分
lane6, 前溶出画分
lane 7, Nuvia™Qウイルス画分

2段階のクロマトグラフィーで高純度のウイルス粒子が調製できました。

精製過程におけるウイルス粒子数ならびにDNA、HCP含有量
精製過程におけるウイルス粒子数ならびにDNA、HCP含有量

Nuvia™cPrime, Nuvia™Qの精製過程でウイルスの収率を維持しながら、DNAならびに宿主細胞由来タンパク質(HCP)が除去されていることがわかります。