このコーナーでは、定期的にバイオ・ラッドの新製品や技術情報のトピックをご紹介します。

PI3K[1] /AKT[2] パスウェイ(略語欄を参照)は、アポトーシス、細胞増殖や細胞周期など様々な細胞機能の制御に関与しています。

このシグナル伝達のカスケードでは、まず細胞表面の受容体が活性化され、細胞膜を構成するイノシトールリン脂質をPI3K がリン酸化して、PIP3[3] が産生されます。AKTやPDK1[4]などのPH[5]ドメインをもつタンパク質は、このPIP3に結合することで膜に局在化し、PDK1はAKTと相互作用しやすい状態となります。
こうなると、まずPDK1はAKTのThr308をリン酸化し、さらにmTORC2[6] はAKTのSer473をリン酸化して、AKTを活性化します(図1)。活性化したAKTは、さらに図2のような多くの関連因子を活性化して、様々な変化が細胞にもたらされます。

[略語]
  1. PI3K : phosphoinositide 3-kinase
  2. AKT : protein kinase B または RAC-alpha serine/threonine-protein kinase
  3. PIP3 : phosphatidylinositol 3′phosphate
  4. PDK1 : phosphoinositide-dependent kinase-1
  5. PH : Pleckstrin-homology
  6. mTORC2 : mammalian target of rapamycin complex 2

AKT経路の機能不全が生じると、がん、心血管疾患、2型糖尿病、自己免疫および神経障害を含む様々な疾患につながります。

PI3K/AKTシグナル経路を理解する事は、様々な疾患に対する新たな治療薬の開発につながる貴重な情報となります。
例えば、AKT1のPHドメイン中の17番目のグルタミン酸がリジンに置換された変異体のE17Kは、ヒトの乳がん、卵巣がん、大腸がん、肺がん、子宮内膜がんなど、複数のがんに存在することが知られています。E17K変異によってAKT1は常に活性化された状態となり、下流のシグナル伝達を刺激して、細胞の形質転換と腫瘍の形成を引き起こすようになります(動画参照)。

バイオ・ラッドでは、AKT やリン酸化されたAKTなどPI3K/AKTシグナル経路に関連する抗体を多く取り揃えており、これらのシグナル伝達系の研究をサポートしております。ウェスタンブロッティングによる品質チェック(バリデーション)済みのPrecisionAb抗体も多数ご用意がございますので、下記リンク先のサイトから目的とされる抗体がないか、ぜひご確認ください。

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